堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます

「ああ、あれには参った」
　ははっとショーンがそこで軽く笑う。だが、すぐに真面目な顔になり。
「だがな、その二の舞になりそうだ。遠征の話がきている」

「誰にですか？」
　ショーンのその言葉に、エレオノーラはすかさず尋ねる。
「お前に、だ。レオン」

「なぜ？　私は潜入調査が主で遠征は担当ではないはずですが」
　エレオノーラの質問は正しい。彼女の任務は専ら潜入調査。遠征などという普通の騎士団の仕事は行わない、はずなのだが。

「そうだ」
　ショーンは両手を組んで、そこに頭を埋めた。言い訳しかできない。
「陛下が、隣国の視察に行くことになった。というより毎年この時期に行っている」

　頭を埋めたまま言う。きっとエレオノーラとダニエルの顔を見たくないのだ。
「それに同行する通訳を探している」