堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「団長」
 静かに声を発したのはダニエルだ。このショーンが言わんとしていることを察したらしい。
「陛下には、専用の通訳がついているはずですが」
 そう、国王にはそれなりの通訳がついている。だからあのとき、ジルベルトの婚約者となったエレオノーラがスカウトされたのだ。その、専用の通訳として。

「まあ、あれだ。通訳が、体調不良で同行できなくなった」

 ダニエルは目を見開いた。通訳は他にもいたはずだが、隣国のその言語を扱える人間は限られている。
 ショーンはまだ顔をあげない。

「それで、陛下が新しく通訳を探していてな。一人は心当たりがあるらしい」
 心当たりがあるなら、その人物に頼めばいいじゃないか、とダニエルはエレオノーラと顔を見合わせた。

「どなたですか?」
 その相手に期待して、ダニエルが少し身を乗り出した。

< 282 / 528 >

この作品をシェア

pagetop