堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 ジルベルトは受け取った書類を、机の上に放り投げる。内容は理解した。
 そう言われると毎年行っていたような気がする。そのときは、自分かサニエラが護衛についたはずだ。むしろ、どちらかがつかなければならないだろう。護衛場所と護衛対象を考えると。

「サニエラ、お前。護衛について隣国に行くのと、こっちで留守番しているのと、どちらがいい?」
 念のため尋ねてみた。

「私はまだ休暇をいただいておりませんので、休暇でお願いします」
 期待通りの答えだった。

「だったら、留守番か。むしろ、お前に護衛を頼みたかったのだが」
 サニエラを置いていくなら、護衛には自分がつかなければならないだろう。と思うと、なぜか幼い新妻の顔が浮かんだ。

 行きたくない。ものすごく行きたくない。また数日ほど会えなくなるのかと思うと、ものすごく行きたくない。
 なんとかしてサニエラに護衛を任せることができないか、ということをジルベルトは考え始めた。サニエラは急に寒気を感じて、肩を抱いてしまった。
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