堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます

「一番優秀な奴が体調不良で同行できないとか言っていたような気もする」
　公には体調不良と言われているが、実はグリフィン公爵の件と繋がっていたというのが本来の理由。だが、それは公にされていないため、体調不良という言葉を使っているのだ。

「そうなると、通訳がいないよな」
　ショーンがジルベルトに鋭い視線を投げつけて言った。

「そうだな」
　ジルベルトは、何、当たり前のことを聞いているのだ、という顔をする。

「陛下は通訳を探している。通訳ができそうな人間に心当たりはあるか？」
　ショーンのその問いに、ジルベルトは目を細めた。その心当たりを考えているのだろう。『陛下』と『通訳』というキーワードで該当する人物は一人いるのだが、あえて「ない」と答える。

「陛下のご指名はエレオノーラだ」
　ショーンが言うと、すかさずジルベルトは。
「却下」