堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 そしてここは、そんなエレオノーラとドミニクが乗っている馬車の中。

「セレナさんは、リガウン団長の知り合いと聞いたのですが」

 彼は確か、ジャックと言う名でジルベルトの部下であったと、エレオノーラは記憶している。
「はい。エレンさんとも仲良くさせていただいております。今回のお仕事もジルベルト様とエレンさんからの紹介です」
 エレオノーラは必要最低限の会話でおさえておきたい、と思っていた。だから、回答も必要最小限、と思っていたら、彼の話の矛先がかわる。

「ドミニクさんは、リガウン団長の奥さんのお兄さんですよね」
 なんと、その矛先はドミニクに向かっていたのだ。

「そうです」
 ドミニクも必要最低限の返事だった。

「では、お二人はお知り合いなのですか?」
 ここで言うお二人とは、セレナとドミニクのことだ。そうきたか、とエレオノーラは思う。このジャックという男、なかなか鋭い。
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