堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 みるみるうちにフレドリックの頬が赤くなり、耳まで赤く染まる。

「ちょっと、マリー。この子、照れてるわよ」
 どうやら気付かれてしまったらしい。フレドリックは照れている、というか恥ずかしいのだ。マリアのような女性にこうやって触れられていることが。

「そうよ。フレディったらとっても可愛いの。今までにいないタイプでしょ?」
 そこでマリアは楽しそうに笑う。

「マリーが飽きたら、私に譲って」
 そして女も負けずに笑う。

「いやよ。この子は私のもの。飽きるはずがないわ」
 あっちへいきましょう、とマリアはフレドリックの手をとった。一目のつかない、ボックス席へと移動する。
「飲む?」
 とマリアが尋ねてきたので、フレドリックはそれに頷いた。

「マリーはどうして僕に声をかけたの? マリーのような素敵な女性なら、選びたい放題じゃないのかな?」
 マリアに作ってもらったグラスを手にしながら、フレドリックは尋ねた。

< 308 / 528 >

この作品をシェア

pagetop