堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「どうしてかしら?」
 マリアは長い足を組んで、グラスを傾けた。
「あなたの顔。綺麗だから、かしら?」
 目を細めて、彼女はフレドリックを見つめる。フレドリックも驚いて彼女を見つめた。
 目が、合う。

「ねえ、一目ぼれって言ったら信じる?」
 マリアは頭を傾けて、それをフレドリックの肩にのせた。
「私、綺麗な顔が好きなの。だけど、あなたの顔はもっと好き。一目見て、ビリっときたの。信じられる?」
 頭を乗せたまま、静かにマリアは呟いた。

「僕も、マリーの顔を見てビリっときた」
 彼女の顔がのっている肩とは反対側の手で、彼女の頬を触れた。
 触れた時、彼女の身体がピクリと可愛らしく反応した。意外と初心なのは彼女の方らしい。恐らくここの店員として、金蔓を見繕っていたのか。だが、フレドリックは最初にお金はあまり持っていないと伝えた。ただの金蔓であれば、あそこに見え隠れする豊かな腹の派手な衣装に身を包んでいるあの男の方を狙うだろう。

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