堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 そうですよねぇ、とエレオノーラは心の中で呟いた。
 ドミニクの視線がいろんな意味で怖い。

「エレン、経緯を説明しなさい」
 ダニエルから言われてしまった。むしろこの口調は命令であり、拒否することは許さないというような。
「あのときの説明と同じでいい」

 あのときと同じって、つまり胸を触られたとか、ちゅーしてしまったとか、それをこの家族の中で説明しなければならいのか、とエレオノーラは思った。そんなの普通だったらば、こっ恥ずかしくて無理。だけどエレオノーラには仮面がある。その仮面さえつければ、その役になりきることができるのだ。
 エレオノーラは調査報告員という仮面をつけた。そして、先日ダニエルに説明した内容と同様のことを淡々と話した。

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