堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「ドムお兄さま、誰もお兄さまの好みについては聞いておりません。これは、潜入調査ですよ」
 両手を腰に当ててエレオノーラが言った。

「え、その恰好で? どこに?」
 ドミニクのその疑問は正しい。この時間からそんな恰好で、一体どこに潜入調査だというのか。

「だから、ご飯を食べるのが潜入調査なのです」

「え?」
 ドミニクは左側の唇を引きつらせ、いかにも嫌だという顔をしている。むしろ、嫌だ。
「普通にご飯を食べようよ」
 本音がぽろりとこぼれた。潜入調査として食事をするよりは、普通に食事をしたほうが絶対に美味しくいただける。

「私もそうしたいのはやまやまなのですが、こちらの潜入調査はショーン団長からの命令になっています」

「僕も潜入するの? 僕、広報部だよ」

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