堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます

10.視察です

 バーデールの三日目の朝。今日のクラレンス殿下の予定は、この王都周辺の視察だ。
 クラレンスには子供が三人いる。そのせいか、子供のための施設の視察が多い。
 今日は、東の外れにある子供の遊び場の視察だった。空は透き通るくらいの青。そして穏やかな太陽の日差し。空を見上げれば少し目を細めたくなるけれど、このような日に外を出歩くことができるというのは、心も晴れ晴れとしてくる。

 そこは子供が全身を使って遊ぶことができるような、屋外の施設だった。
 木で作られたアスレチック。昇ったり、滑ったり、ぶら下がったり。子供が子供のうちにつけておくべき必要な能力を、この遊びを通して鍛えることができる。
 この青空の下、子供たちが全身を使って遊んでいた。

 これは面白い、とジルベルトは思った。子供の頃からこうやって自然と身体を鍛えることは、将来の騎士を育てることにつながるのではないか、と。さて、これをどのようにして自国へ広めるべきか。エレオノーラがいなかったら、この護衛をサニエルに押し付けるところであったが、来てよかったかもしれない、と思えた瞬間だった。
 そして、子供たちがかわいいと思えた。この子供が自分とエレオノーラの子供だったらなおさらだ、と、自分の三歩前を歩くクラレンスとエレオノーラを見つめながら、ジルベルトはそんなことを考えていた。

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