堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 クラレンスは屋外で記念樹の植林を行う。隣国の国王がわざわざそれをすることに意味があるらしい。何しろ、三人の子の父親ということもあって、近隣諸国からもそれらに関しては評判になっている。
 いまだに、父親が子供と関わることがまだ少ないこの国では、隣国の国王の子供との関わり方というのは興味をそそられる内容らしい。また、それを手本にしたいという気持ちもあるらしい。

 植樹が終わればその施設を見回る。どう見てもサクラだと思われるような子供たちが、奇声というか雄たけびというかをあげながら遊んでいる。その子と一緒にいる親たちにクラレンスは声をかけることが今日の視察の目的の一つでもある。

 そしてすかさずそれを通訳するのが、エレオノーラの仕事だった。
 お子さんは何人ですか? お名前は?

 そう言った些細な声掛けであるのに、声をかけられた者は嬉しそうに答えてくれる。

 ジルベルトも護衛をしながら、いつかは自分もエレオノーラとの間に子供を授かったら、彼女はこのような温かい顔を子供にも向けるのだろうか、とか、男の子もいいけど女の子も欲しいな、とか。彼の妄想は止まることをしらないようだ。
 つまりジルベルトは、他の親子を通していつか近い自分たちの未来をみていたのだ。護衛の最中にも関わらず、なぜか心が穏やかになるのはなぜなのか。

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