堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「だが、彼女も年頃の娘だ。誰かいい相手がいるかもしれないぞ?」
 ジルベルトはさりげなく口にする。

「でも、婚約者はいないって言ってました」

 もう、聞いたのか、こいつは。とジルベルトは思っている。

「だから、団長。ボクとセレナさんの仲をとりもってください」
 テーブルの上に両手をついて、ジャックは頭を下げる。
 とうしたらいい? という意味をこめて、ジルベルトはドミニクに視線を向けた。彼は、小さく顔を横に振ったが。

「ジャックさん。婚約者はいないってだけで、もしかしたらお付き合いしている男性とかはいるかもしれませんよ?」
 ドミニクは、サラダをとりわけながら言った。

「だったら。団長、確認してくださいよ」

 その流れで、俺かよ、とジルベルトは思う。
「ああ、聞くだけは聞いといてやる」
 そこでジルベルトは酒を呷った。
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