堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 それに、うーん、とエレオノーラは唸って考えてから。

「まあ、一般的な話になりますが。娼館に売られますね。しかも売られる前に薬漬けにされるのがオチかと」

「なんで、私が?」
 マリアは目を見開いた。驚きを隠せない様子。

「たまたまですよ。見目がよくて、それなりに遊んでそうで」
 マリアは顔を伏せた。遊んでそう、に見えたということだろうか。あの店で働いていたから? ただ家族を助けたくてあそこにいただけなのに。それがいけなかった、ということなのか。

 ふと、エレオノーラは耳を澄ませた。
 足音が三種類。カツカツ、コツコツ、コッコッ。どうやら三人の人物がこちらに向かってきているらしい。

「マリアさん、そのまま顔を伏せていてください。私が、合図をしたらそのまま立ち上がって入り口に向かって走って逃げてください」

 ギギーと軋んだ音を立てて、ドアが開いた。

「マリー、待たせて悪かったね」
 右手に何かを持ったフレドリックが、後ろに二人の男を従えて姿を現した。
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