堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「だってさ。エレンが一人であいつら三人をやっつけたんだよ。少しは遠慮しようよ」

 はぁ、と盛大にため息をつくドミニク。あんなに可愛い妹だったのに、という儚い思いが込められている。

「遠慮ってなんですか? あの人たち、大して強くなかったですよ?」

 エレオノーラはキョトンという表情を浮かべて答えた。

「ジルさん。そろそろエレンと結婚したことを後悔しているのではないですか?」

「なぜだ? こんな素敵な女性は他にはいないだろう。可愛くて強くて、美しくて気高くて……」

「いや、聞いた僕がバカでした。はい」

 エレオノーラが大して強くなかったと評した三人だが、女性をさらうだけの力はあるため、一般的には(ちゅう)()から上の()くらいの強さは持ち合わせているものと推測する。上に分類されれば、騎士団レベルの身体能力を持ち合わせている。

 まあ、こう見えてもエレオノーラも騎士団に所属しているわけだし、しかもよりによってあのリガウン侯爵と日々訓練に励んでいるようだし。
 なんだかんだでお似合いの二人なんだろうな、とドミニクは頬杖をつきながら目の前の夫婦を見つめた。だけど、あの可愛らしいエレオノーラが、ちょっとずつマッチョになっていくことだけは避けたい。という兄バカなドミニクの思い。

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