堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「せっかくリガウン団長がいらっしゃるのですから、団長の好みの女性を演じた方が良いのではないかと思ったのですが」

 ダニエルは腕を組んだ。この妹は本当にジルベルトの好みの女性に変装する気だ。この妹なら間違いなくやる。
 だけどダニエルとしても、できることなら演技ではなく本気になってもらいたいと思っている。それは双方にとって。
 ただ、ジルベルトの気持ちがわからない以上、下手に妹にそういうことも言えない。そう、ジルベルトの気持ちがよくわからない。
 つまり、どっちもどっちで、よくわからない、という結論に至る。

「まあ。はっきり言って、リガウン団長の好みの女性についてだが。オレは何も知らん」

 腕を組んだダニエルが答えた。

「なんで、そんな投げやりな態度なんですか」
 エレオノーラはぷーっと頬を膨らませた。最後の砦がダニエルという兄だったのに、その砦を壊された気分だ。これでは、敵に攻め入られてしまう、と。

「そんな顔をしても、知らないものは知らん」
 ふん、とダニエルは鼻息荒く答える。ここはきっぱりと言わないと、妹に押し切られてしまう。

「でしたら、リガウン団長から聞いてください」

「何?」
 結局、妹に押し切られてしまったダニエル。

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