堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「私、ドロシー。よろしくね、エレンちゃん」
 席につくと同時に、隣の赤毛の女の子が声をかけてくれた。

「はい、よろしくお願いします」
 笑顔で答えてみた。だけど心の中は嬉しさで溢れている。
 そう、よくよく考えてみたら、エレオノーラに友達と呼べるような人物がいなかったのだ。しかもエレンちゃん、と呼ばれることも新鮮である。
 ウェンディは兄の婚約者ということもあってよく話はするけれど、周囲には大人が多かったし、騎士団の仲間たちも年上が多いし。何かの相談事も家族にすることが多かったし。
 と、やっぱり友達がいなかったということに気付く。ちらっと、隣のドロシーに視線を向けると目が合った。嬉しい。この一言に尽きる。
 授業はエレオノーラにとっては簡単なものだった。何しろ、二学年も下の内容だ。できない方がおかしい、と兄たちには言われている。あの兄たちは変なプレッシャーをかけてくるのだ。

 休憩時間になると、やはりドロシーが声をかけてくれた。それから数人の女子生徒も。エレオノーラとしては、めちゃくちゃ嬉しい。

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