堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「貴殿は諜報部のフランシア部長」
 ダニエルを認識したジルベルトが口を開いた。

「はっ。第(れい)騎士団諜報部ダニエル・フランシアであります。この度は、我が部下がご迷惑をおかけしたようで、申し訳ございません」
 ダニエルはピシッと気を付けの姿勢をとって、ジルベルトに頭を下げた。ダニエルはただの諜報部部長、ジルベルトは第一騎士団の団長。この騎士団の中では、当たり前であるがダニエルよりも偉い人に該当する。

「いや。迷惑をかけたのは私のほうだ。ところで、先ほどの女性は?」

 ジルベルトはダニエルを見下ろすようにして言った。ダニエルも男性の方ではけしてその身長が特別低い、というわけではないのだが、とにかくジルベルトの背が高すぎるのだ。
 ダニエルは、ジルベルトが発した「女性」という言葉に敏感に反応した。今回のエレオノーラの任務は、男装したうえでの潜入捜査だ。見た目はどこからどう見ても男性。第零の仲間にもその事実は隠している。だが、なぜに第一騎士団であるジルベルトに女性とバレてしまったのか。エレオノーラの変装が見破られてしまったとも思えない。彼女の変装はいつだって完璧だ。

< 4 / 528 >

この作品をシェア

pagetop