堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 エレオノーラとしては初めてではあるが、脳内のどこかの昔の記憶は懐かしんでいた。でも、この古の記憶、潜入調査以外では意外と役に立たない。
 そろそろエレオノーラの宿題も終わるという頃に、ジルベルトがやってきた。

「少し、休憩したらどうだ」

 お茶とお菓子を持ってきたようだ。

「はい。ありがとうございます。今、終わったところです」

「そうか」
 やはりジルベルトは嬉しそうだった。何をこんなに彼を喜ばせるのか、エレオノーラにはさっぱり心当たりが無い。
 彼女は先にソファに座っていたジルベルトの隣に座り、カップに手を伸ばす。

「そういえばジル様。ジル様も学院には通われていたんですよね?」

「まあ、十何年も前の話だが」
< 409 / 528 >

この作品をシェア

pagetop