堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「いえ。妹がリガウン団長の好みの女性のタイプを気にしておりまして」
 ダニエルは口にしたが、なぜか恥ずかしい。他に誰もいないにも関わらず、そっと小声で囁いた。
「リガウン団長はどのような女性が好きでしょうか」

 ふむ、とジルベルトはフォークを運んでいた手を止めた。真面目に考えているようだ。

「あまり、そのようなことは考えたことがなかったな」
 結婚に興味が無い、というのもあながち嘘ではなかったのだろう、とダニエルは推測する。

「そうですか。妹が、その、リガウン団長の好みのタイプの女性になりたい、と言い出したものですから」

 ジルベルトの右手はフォークを持ったまま動かない。

「そうか。そう思ってもらえるだけでも嬉しいものだな」
 ジルベルトの顔がほころんだ。そして、再びフォークを動かし始めたが、皿の上にある付け合わせをそれでいじっているだけで、口元まで運ぼうとはしない。恐らく、女性が見たらそのギャップに胸がきゅんきゅんするところだろう。だが、残念ながらダニエルはきゅんきゅんしなかった。

 ジルベルトは何かを考えているようだ。

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