堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「第一騎士団でもそのようなことはあるのですか?」

「そうだな。実技なんかには誰かが教えに行っているはずだが」
 ジルベルトのその言葉に、エレオノーラの心臓はドキリと高鳴った。もちろん、心ときめく方の高鳴りではない。

「え。てことは、今もどなたかいらっしゃるってことですか?」

「ああ、そうだな。いつもは通常の任務と分けてそっちは人選している。やはり、指導という立場になるから、それに適した人物を選ばなければならないからな」
 どうやらジルベルトは、今の派遣している人物を思い出そうとしているようだ。

「ジル様は、来ないでくださいよ」
 じとーっと、エレオノーラが睨むと「ああ、それもいいかもしれないな」と呟いている。

「絶対来ないでください」
 エレオノーラはお茶を一口飲んだ。ジルベルトは楽しそうに笑っている。だから、その笑顔が怖いんだって、というエレオノーラの心の声は残念ながらジルベルトには届かない。

< 411 / 528 >

この作品をシェア

pagetop