堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 演劇部の見学を終えたエレオノーラは、帰路につく。
 心配性のジルベルトは馬車を出すと言ってくれたが、一応留学生という扱いになっているし、歩けない距離ではないということで、それを丁寧にお断りしてみた。もちろん、ジルベルトは不満そうだった。エレオノーラとしては馬を使いたいところだったが、王宮と違って学院内には馬を繋いでおくところがない。

「ただいま帰りました」

「あら、今日は少し遅かったのね」
 エレオノーラの声を聞いた義母がニコニコとした笑顔を顔中に浮かべてやって来た。

「ご心配をおかけしてしまってすいません」

「いいのよ。早く着替えていらっしゃい。いつものところで待っているから」
 義母のいつものところとは、いつものサロンだ。エレオノーラは手早く着替えるとそのサロンへと向かった。

「今日は、部活動を見学していたら、少し遅くなってしまいました」
 言い訳するかのようにそう言葉を発し、いつもの席に座る。

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