堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 おずおずとそう言う姿は、いかにも入部を悩んでいますという生徒に見える。いや、中身は十八だが、今は立派な学院の生徒という身分を持っている。だから、生徒に見えるのではない。入部先の部活動を悩んでいる立派な生徒だ。

「悩んでいるくらいなら、やってみたらいいんじゃない? 学院の生活なんてあっという間よ。そのあっという間という限られた時間の中で、どれだけのことを経験できるかということが大事だと思うのよね」
 さすが義母。懐が広い。あのジルベルトをあそこまで育て上げただけのことはある。

「はい。ありがとうございます。お義母様にそう言っていただけると、本当に心強いです」

「まあ。あのジルのことだから。一言二言、十言くらい文句は言いそうなのが目に見えているけれど。あなたの人生はあなたのものなのだから、最後はあなたが決めていいのよ」

 エレオノーラは演劇部への入部を決意した。と同時にジルベルトにはなんて報告すべきか、ということも悩んだ。
 一言二言、十言の文句が目に見えていたからだ。
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