堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「へえ。あのクリスがね」

「それから、あのプライドの高いジェイミでさえ、彼女の演技力を認め、自分の役を彼女に譲ったという話です」
 その話を聞いたときはサイモンでさえ信じられなかった。ジェイミは演劇にかけては他のどの生徒よりも情熱的に取り組んでいる。情熱的に取り組んでいるからこそ、口調もきつくなるし、一つ一つの仕草も鋭くなっている。それだけ演劇に対して真摯に向き合っているということだ。

「クリスとジェイミが認める留学生ね。その留学生の演技、見てみたいものだな」

「ジェイミが役を譲ったくらいですから。卒業公演には出るのではないでしょうかね」
 やはりサイモンは落ち着いている。冷静にエレンという留学生を観察できている証拠か。

「そのジェイミはどうしている?」
 思い出したようにアレックスが尋ねた。

「ジェイミですか?」
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