堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 アレックスがエレオノーラを見送るためにすっと立ち上がった。

「せっかくお誘いいただきましたのに、お断りする形となってしまい、申し訳ありません」
 エレオノーラはペコリと頭を下げた。二つに結んである毛先も、ペコリと揺れる。
「では、失礼いたします」

「あ、ちょっと待って」
 エレオノーラが生徒会室を出ようとしたときに、アレックスに右腕を掴まれた。あまりにもそれが不意打ち過ぎたため、彼女はバランスを崩し、彼の胸に頭を預ける形になってしまった。

「すいません」
 エレオノーラが小さく謝ると。
「こっちこそ、驚かせてごめん」
 アレックスのきらきらスマイルがさく裂するものの、エレオノーラには効かないらしい。
「では、失礼します」
 体勢を整えたエレオノーラは、生徒会室を後にした。
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