堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます

１０．子どもの時間です（２）

「やはり、彼女はただ者では無いな」
　エレオノーラを支えた右手を見つめながら、アレックスはその言葉を吐いた。
「私の笑顔にも動じない」
　どうやらこのアレックス、自分の笑顔が武器の一つであることを知っているようだ。

「会長。あんまりエレンちゃんのことをいじめないでくださいよ。私の友達なんだから」
　ドロシーがお菓子をつまみながら言った。

「わかっている。だが、やはり彼女は気になる。特に、あの鍛えられた腹筋」

「会長。あんまりエレンちゃんにセクハラしないでくださいよ。私の友達なんだから」
　ドロシーは呆れながら、さらにもう一つお菓子を口に放り込んだ。

「サイモンも見ただろう。今の彼女の動き。私が手をとった瞬間に、どの行動をするのが正しいのかを判断してから、私に倒れ掛かってきた」
　アレックスは彼女を支えた右手をじっと見つめている。そこに触れた彼女の温かさ、そしてその重さ。