堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「ええ。会長が彼女のお腹にきっちりとその手で触れているところを、しっかりと見ていました」

「ああ、素晴らしい腹筋だった」
 学院の男子生徒の中でも、あれほどの腹筋を備えている者はいないだろう。

「会長、エレンちゃんはあっちでも演劇部だったみたいですから、発声練習の賜物じゃないですかね? あんまり女の子に向かって腹筋腹筋って腹筋ばっかり褒めるのもいかがなものかと思いますよ」
 ドロシーはそこでお茶の残りを一気に飲み干した。お菓子を食べたら口の中の水分を全て奪われたような感じがした。

「会長がエレンちゃんを生徒会に誘いたいって言うから連れてきたんですよ。いじめたりセクハラしたりするんなら、許しませんからね」
 ドロシーは立ち上がって、手を腰に当てる。どうやらアレックスを威嚇しているつもりらしい。

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