堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「ちょっと、ハリー先輩まで」
 ドロシーの頬は余計に膨れた。まあまあ、とサイモンが宥めている。どうやら男性陣はエレオノーラの腹筋に興味を持ったようだ。まあ、彼女の腹筋はあのリガウン侯爵に鍛えられているだけあって、その辺の男性にも負けないような立派なものではあるのだが。
 こうやって彼女よりも年下の男子にも興味を持たれてしまうとは、ジルベルトに知られてはならない案件である。

「それよりも、なんで彼女がこの生徒会室に? 何か用事でも?」
 腹筋からの話題を反らすために、イアンが口を開いた。空気が読める子である。

「生徒会役員に誘った」
 アレックスが静かに答えた。

「ですが、彼女は短期留学だったはず。こちらにいるのは三月(みつき)だけですよ」
 イアンのその答えに。
「え、やっぱりそうなの?」
 驚きの声をあげたのは、ドロシー。カップを口元につけながら、そう叫んだ。

< 459 / 528 >

この作品をシェア

pagetop