堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます

12.開演です

 学院の卒業パーティの前に、演劇部の卒業公演がある。これは卒業生たちに、在校生が贈るもの。最終学年がこの劇を見て、安心して後輩たちに部を任せられると思うように行っている公演。

 たいてい、観覧者は演劇部の関係者が多いのだが、なぜか今年は部外者が多い。それは演劇部員の宣伝のおかげに違いないだろう。
 さて、観客席にどんな部外者がいるかというと、目立つのは生徒会長であるアレックス・リンドレー。彼の目的はもちろんエレオノーラだ。アレックスが暴走したときのためにハリーがその隣にいる。それから前評判が高いとして、ドロシーも取材を兼ねて観客席にいた。隣にはサイモン。
 関係者としては、演劇部員の家族や親類。そしてこの学院の教師陣。エレオノーラの関係者はもちろんリガウン侯爵夫妻。残念ながらジルベルトは招待できていない、と思ったら、別枠でこちらに潜り込んだらしい。フレディ経由の騎士団枠としての参加らしい。ちなみに騎士団枠としては、ちゃっかりダニエルやドミニクまでいる。
 ダニエルが言うには、こんな面白いものを見ないわけにはいかない、らしい。だが、彼には、エレオノーラがこの演劇部の中から第零の諜報部として三人も推してきているため、そこも見ておきたいという気持ちがあった。
 ドミニクはエレオノーラの活躍をひたすら楽しみにしている。ちなみにこの騎士団枠席は、五列から六列目のセンターブロック席を占有している。舞台からこの一団に気付いたら、多分ビビる。むしろエレオノーラは嫌がるだろう。

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