堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「それで、私はなぜここにいるのでしょう?」
 残念ながらドロシーはいない。今、もっとも警戒すべき相手であるとずっと自分の中で思っていたアレックスと二人きりになっている。とにかく、脳内が警戒信号をずっと出している。

「私が呼び出したから、かな?」

「え、ええ。まあ、そうですね。呼び出されたから私もここに来たわけで。はい、それで、どういったご用件でしょうか」

「君と二人きりで話がしたかった、というのではダメかな?」

 甘い。この男、甘すぎる。
 考えてみたら、エレオノーラは騎士団連中のお堅い男たちに囲まれていたから、このような甘いタイプの男性には慣れていないのだ。

「特に私は話すことが何もないのですが。それに会長には婚約者がいらっしゃると伺っておりますので、今、このように私と二人きりになるのはあまりよろしくないのかと思いますが?」

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