堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 卒業パーティで普通、ということはドレス姿をご所望か。

「ちなみに、なぜベルニスさんは護衛を必要とされているのでしょうか」

「そうだね。護衛を君に頼む以上、理由は教えなければならないね」
 そしてアレックスはもう一枚、懐から紙切れを出した。綺麗に四つに折ってある紙を丁寧に開く。そして、それをエレオノーラに手渡した。

「私が見ても?」
 受け取りながら閲覧の許可を求める。アレックスはもちろん、と頷いた。
 彼女は黙ってそれを受け取り、黙ってそれの文字を追う。ベルニスとアレックスとの婚約解消を迫る内容。それをしなければ、何かしら報復をする、と。

「脅迫状、ですね」

「そうだね。どうやら私と彼女の婚約を良く思っていない人たちがいるらしい」

「もう少し会長とベルニスさんのお話をうかがってもよろしいでしょうか?」

「もう少し、というのは?」

「そうですね。お二人の馴れ初めです」
 そこでエレオノーラはあざとく笑った。
< 479 / 528 >

この作品をシェア

pagetop