堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます

「え、卒業パーティってそういうものなんですか？」

「卒業パーティだから、ではない。パーティだからだ。たいてい、パーティと呼ばれるものは何かしら起こる。だから、第一騎士団も大忙しだ」
　ダニエルの説明になっていない説明。
「そう、なんですね？」
　納得できないけれど、納得してみた。

「エレン」
　とうとうショーンまでエレオノーラのことをエレンと呼び始めた。騎士団の中ではレオンで通っているはずなのに。このメンバーでは、そんなことはもうどうでもいいらしい。

「エスコートは、リガウン侯爵にお願いしろ」

「え」
　と声を上げたのはエレオノーラではなかった。
「なぜ、父を？」
　ジルベルトの肩がちょっとだけ震えている。