堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「ベルニスさんもお一人では不安でしょう。ですからお友達もご一緒にいかがですか?」

「お断りしたいところですが、そうできる雰囲気ではありませんね」
 エレオノーラはそこで微苦笑を浮かべた。この苦笑には、本当に卒業パーティで何かが起こってしまった、という意味も含まれている。だが、相手はそれには気付かないだろう。

「ええ。賢い女性は好きですよ」
 リーダー格の男は微笑を浮かべた。

 エレオノーラは首をまわして、肩越しにベルニスの様子を見る。彼女は胸の前で腕を組んで震えていた。この状況で震えないご令嬢がいるとしたら、エレオノーラくらいのものだろう。
 この場合、彼らに素直に従うのが吉であると判断した。何しろ、守らなければならないベルニスがいる。彼女に危害をくわえられることは避けたいところ。

「ですが。あなたたちのような怖い顔をした方たちが、彼女のようなか弱い女性と一緒にその辺を歩いたら、警備の者に不信がられませんかね?」

「あらあら、お嬢様は少し勉強不足のようですね。このような部屋は、廊下に出ずとも外に出る道があるのですよ。ですから、あなたたちがここにいたということは好都合」

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