堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 そうだったのか。事前に会場を確認しておかなかったエレオノーラの失態。いや、そうか?
 むしろ「疲れたら休憩室で休むといいよ」と言っていたのは、フレディだったではないか。もしかしてこうなる流れを読んでいた、ということか。

「どうぞ、お嬢様。お手を」
 そのリーダー格の男は、すっとベルニスに手を差し出した。だがベルニスは震えてばかりでその手を取ろうとはしない。その男が少しイラっとしているのを感じとる。

「そのようなことをしていただかなくても、自分で歩けますから」
 エレオノーラはベルニスの隣に寄り添った。

「ふん」
 男は差し出した手の行き先が見つからなくなったため、渋々と手を戻した。「私は別にどちらでもかまいませんけどね」

「ベルニスさん。ここは大人しく彼らの言うことを聞きましょう。私も一緒ですから、ね」

「エレンお姉さま」
 エレオノーラがベルニスの肩を支えると、彼女も力強く頷いた。
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