堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
二人は五人の男性に囲まれて、その部屋を後にする。そして、いつの間にか外に準備されていた馬車に乗り込む。
「こちらの言うことを聞いてくれれば、あなたたちに危害を加えるつもりはない」
目の前に座るリーダー格の男が手をもみもみとしながら、まるで値踏みをするかのようにエレオノーラたちを見ていた。ベルニスはすっかり怯えていて、エレオノーラに寄り掛かって顔を彼女の胸に預けている。エレオノーラはそっとベルニスの背中に手を回して、彼女のそれを優しく撫でていた。
「美しい友情ですね。本当にいつまでも見ていたい。あなたのその強気な目、いつまで持つかな」
エレオノーラは目の前の彼をじっと見ている。目を反らすことはしない。そして、耳は外の音を聞いていた。
今はどの辺だろうか。この速度の馬車がこれだけの時間を走っていたら、応援がかけつけるまでどれくらいかかるだろうか。そうやって考えていることを悟られないように、じっと彼を見ていた。
「ジルさん」
フレディはこの会場の警備責任者であるジルベルトを見つけると、そっと声をかけた。彼が声をかけてきた、ということは状況が動き出したということを、ジルベルトは悟った。少し眉と眉の間に皺を寄せる。
「エレンがさらわれました。ベルニス嬢も一緒だと思われます」
ジルベルトの眉がピクリと動いた。だが表情を崩すようなことはしない。
フレディは胸ポケットより何やら取り出した。
「フレディ殿、それは?」
ジルベルトが目を細めて尋ねる。
「エレンに発信機を持たせておきました。その信号を受信する受信機です。まあ、こちらも発信機の機能を持っていますが」
「はっしんき? じゅしんき?」
「ええ、はい。今、私の方で開発していまして。まだ試作段階ですが、今回はいい機会だと思ってエレンに持たせました。エレンの発信機の信号をこれが受信して、その発信機がどこにあるのか、というのを表示しています。逆にエレンの方にはこちらの信号を受信しているので、お互いがお互いどこにいるのかということがわかります」
「この、赤い点がそうなのか?」
「はい。つまり、彼女は今、ここより東の方向にいる、ということです」
「動いているのは?」
「まだ移動中、ということですね」
この状況をフレディは楽しんでいるようにも見える。
「私は、ダン兄に連絡をしますので」
「ああ、わかった。こちらは至急配置を変更する」
「お願いします」
フレディは頭を下げ、そのまま眼鏡をくいっと押し上げた。楽しくなってきたな、とその目は光っていた。
「こちらの言うことを聞いてくれれば、あなたたちに危害を加えるつもりはない」
目の前に座るリーダー格の男が手をもみもみとしながら、まるで値踏みをするかのようにエレオノーラたちを見ていた。ベルニスはすっかり怯えていて、エレオノーラに寄り掛かって顔を彼女の胸に預けている。エレオノーラはそっとベルニスの背中に手を回して、彼女のそれを優しく撫でていた。
「美しい友情ですね。本当にいつまでも見ていたい。あなたのその強気な目、いつまで持つかな」
エレオノーラは目の前の彼をじっと見ている。目を反らすことはしない。そして、耳は外の音を聞いていた。
今はどの辺だろうか。この速度の馬車がこれだけの時間を走っていたら、応援がかけつけるまでどれくらいかかるだろうか。そうやって考えていることを悟られないように、じっと彼を見ていた。
「ジルさん」
フレディはこの会場の警備責任者であるジルベルトを見つけると、そっと声をかけた。彼が声をかけてきた、ということは状況が動き出したということを、ジルベルトは悟った。少し眉と眉の間に皺を寄せる。
「エレンがさらわれました。ベルニス嬢も一緒だと思われます」
ジルベルトの眉がピクリと動いた。だが表情を崩すようなことはしない。
フレディは胸ポケットより何やら取り出した。
「フレディ殿、それは?」
ジルベルトが目を細めて尋ねる。
「エレンに発信機を持たせておきました。その信号を受信する受信機です。まあ、こちらも発信機の機能を持っていますが」
「はっしんき? じゅしんき?」
「ええ、はい。今、私の方で開発していまして。まだ試作段階ですが、今回はいい機会だと思ってエレンに持たせました。エレンの発信機の信号をこれが受信して、その発信機がどこにあるのか、というのを表示しています。逆にエレンの方にはこちらの信号を受信しているので、お互いがお互いどこにいるのかということがわかります」
「この、赤い点がそうなのか?」
「はい。つまり、彼女は今、ここより東の方向にいる、ということです」
「動いているのは?」
「まだ移動中、ということですね」
この状況をフレディは楽しんでいるようにも見える。
「私は、ダン兄に連絡をしますので」
「ああ、わかった。こちらは至急配置を変更する」
「お願いします」
フレディは頭を下げ、そのまま眼鏡をくいっと押し上げた。楽しくなってきたな、とその目は光っていた。