堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「このお嬢様方は大事な客人だからね。丁寧にもてなすように」

「はい」

「あの、お頭」
 十数人の男のうちの一人が、おずおずと手を挙げた。
「なんだい?」

「ノアイユ家の令嬢は一人では?」

「ああ、彼女はノアイユ家のお嬢様の友人だそうだ。バーデールから来ている留学生らしい」
 このリーダー格の男は、馬車の中で必要最小限の会話で情報を引き出そうとしていた。それに対応したのは専らエレオノーラで、ベルニスはただただ顔を伏せて震えているだけだった。

「バーデールにも揺さぶりをかけられるかもしれないから、大事に扱え」

「はっ」

 リーダーと一緒にいた残りの四人の男のうちの一人が、ベルニスの腕を乱暴に捕まえた。キャッ、と彼女は小さく悲鳴をあげる。

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