堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「この赤いのが動いているように見えます。どういうことでしょうか?」
 ベルニスが尋ねる。

「それはですね。みなさんが助けに来てくださる、という意味ですよ」
 エレオノーラはこの点が停止するのを待っていた。

「本当にこちらの方はお優しい。それともおバカなだけかしら」
 その呟きに、ベルニスは首を傾けた。
「私たちを縛ることなく、この部屋を出ていったでしょう?」

「でも、扉には鍵をかけられました」

「入り口はそこだけかしら?」

 すっとエレオノーラはバルコニーの方へ視線を向ける。

「え、ですがここは二階ですよ」

「たかが二階です。ベルニスさん、男性が苦手とは伺っておりますが。その、助けに来てくださった男性に対しては、少し我慢をしてもらえますか?」

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