堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「あ、はい。今も我慢できたので、それくらいなら大丈夫です」

「それは良かった」
 エレオノーラはゆっくりと立ち上がると、バルコニーへと向かう。窓を開けると、カーテンが揺れる。そして外へ出る。
 下を見ると、いたいた、フレディだ。
 目が合った。頷き合う。

「ベルニスさん。バルコニーの方へ」
 そう指示を出すエレオノーラは、いつもの学院で見かける彼女とは違うように感じた。ベルニスが彼女の指示に従いバルコニーへ出ると、すでに騎士服に身を包む男が数人いた。
 その騎士服に身を包む男たちの中に一人、ベルニスでさえも見知った顔。
「フレディ先生」

「しっ。静かに。ベルニスさんは彼らと一緒にここから降りてください」
 フレディの言う彼らとはここにいる騎士団の人たちのことだろう。ベルニスがエレオノーラに視線を向けると、彼女は力強く頷く。大丈夫だから、そう言っているように見える。

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