堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「あの、エレンさんは?」

「私は、大丈夫です。心配してくださってありがとう」

「一緒に、行かないのですか?」

「ええ、ごめんなさい。だって、こんな楽しいことをみすみす見逃すわけにはいかないので」

 楽しいこと? とベルニスは首を傾ける。
 エレオノーラは艶やかに笑むと。
「会長が待っていますよ。あなたのその気持ち、きちんと会長に伝えましょう。あなたの心の中にはたくさんの言葉がある。ですが、口にしないと伝わらない想いというのもありますよ」

 いきなりベルニスがエレオノーラの手を握った。
「エレンさん、ありがとうございます」

「ベルニスさん。自信を持って。あなたはとても素敵な女性です。あなたにはあなたにしかない魅力があります」

 エレオノーラはベルニスを引き離すと騎士団の一人に彼女を預けた。

「さて、と。反撃の狼煙をあげますかね」
 エレオノーラの呟きに。

「ダン兄に怒られない程度にして欲しいね」
 フレディが肩をすくめた。
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