堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「きちんとご飯を食べていなかったのか?」

「いいえ。潜入捜査は、学院生活を送るだけですから、大した負担ではありません。ご飯もモリモリ美味しくいただいておりました」

「だったら、なぜ」
 ジルベルトがエレオノーラの手を握った。

「えっと、お腹に」
 その握られた手を、お腹の上へと移動させる。

「君の腹筋は相変わらずだな」

「えっと、腹筋ではなくて、ですね。どうやら、お腹に赤ちゃんがいるようで」

 ジルベルトは思わず手を離してしまった。そして、ガタンと激しく音を立てて立ち上がる。あまりにもの勢いに、椅子は後ろに倒れてしまった。

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