堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「でしたら、わざわざフランシア邸にまで行く必要はないですよね。そのような話は騎士団の中でクローズさせてしまいなさい」
 助け舟は母親の力によって見事に撃墜された。

「あ、はあ。まあ、そうかもしれませんが」
 酒の力を借りても結局それしか言えないし、助けた舟は沈められてしまったし。母親の力というものは恐ろしい。

「ああ、もう。はっきりしない男ね。そんなんだから三十過ぎても結婚の一つや二つもできないのよ。それで、あそこには息子が三人、娘が一人。あなたが礼を言いたい相手というのはどなたかしら?」
 結婚は一つで充分では、という思いは心に秘めておく。ここで余計なことを口にしては、だったらその一つを達成してから言いなさい、とか反論されてしまいそうで恐ろしい。

「フランシア諜報部長」
 結局、酒の力を借りても誤魔化すことしかできないジルベルト。

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