堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
まあ、と今度は困ったように母親が左手で口元を押さえた。この母親は何か考えているのだろうけど、その沈黙が怖い。ゆっくりと母親は口を開いた。
「つまり。任務で一度お会いしたエレオノーラ嬢に結婚の申し込みをしたい、ということよね?」
「はい」
母親が言っていることは正解である。ジルベルトはあの任務以降、エレオノーラに会っていない。
「性急すぎない? でも、ジルの年齢を考えたら。いや、でも、相手がなんていうか……」
母親はぶつぶつと独り言を言い出した。多分、現実を受け止め切れていないのだろう。
「あの、母上。私の行動はそんなにおかしいのでしょうか」
不安になったジルベルトは尋ねた。
「それを聞く? 今更?」
母親はコホンと咳払いをする。
「本来であれば、あなたは適齢期に縁談がきたときにそれを受けるべきでした。ですが、それをことごとく断って、今に至っています」
「はあ」
「それで、次は結婚したい女性がいると言い出した。そうなると私たちは、あなたが縁談を断っていたのは、好きな女性がいたからだった、と思うわけです」
「はあ」
「ところが。その結婚したい相手は、つい先日お会いしたばかりの女性。しかもまだお付き合いもしていない。本来であれば、あなたがエレオノーラ嬢に気持ちを伝えて、相手の気持ちを確認して、お付き合いをして、婚約をして、結婚という流れです」
「つまり。任務で一度お会いしたエレオノーラ嬢に結婚の申し込みをしたい、ということよね?」
「はい」
母親が言っていることは正解である。ジルベルトはあの任務以降、エレオノーラに会っていない。
「性急すぎない? でも、ジルの年齢を考えたら。いや、でも、相手がなんていうか……」
母親はぶつぶつと独り言を言い出した。多分、現実を受け止め切れていないのだろう。
「あの、母上。私の行動はそんなにおかしいのでしょうか」
不安になったジルベルトは尋ねた。
「それを聞く? 今更?」
母親はコホンと咳払いをする。
「本来であれば、あなたは適齢期に縁談がきたときにそれを受けるべきでした。ですが、それをことごとく断って、今に至っています」
「はあ」
「それで、次は結婚したい女性がいると言い出した。そうなると私たちは、あなたが縁談を断っていたのは、好きな女性がいたからだった、と思うわけです」
「はあ」
「ところが。その結婚したい相手は、つい先日お会いしたばかりの女性。しかもまだお付き合いもしていない。本来であれば、あなたがエレオノーラ嬢に気持ちを伝えて、相手の気持ちを確認して、お付き合いをして、婚約をして、結婚という流れです」