堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます

9.婚約しちゃいました

 エレオノーラはジルベルトからの求婚を受け入れた形になった。フランシア家に反対する理由は無い。あるはずなどない。むしろ、喜んでいる。
 そしてこの後、婚約申請書を教会に提出すれば、二人は正式に婚約が認められるという段階までいった。

 だがその前にやるべきことがある。

 エレオノーラはジルベルトの両親に挨拶をしなければならない。
 という日が今日だった。つまり、今日はジルベルトの婚約者になるために恋人役を演じる日。

「エレン。リガウン卿がいらっしゃったぞ」
 兄のダニエルに呼ばれ、準備を終えたエレオノーラが姿を現す。

「相変わらずだな、お前のそれは」
 素顔の妹とは違う妹のそれに、兄であるダニエルでさえそう漏らしてしまうほど。

 何しろ相手はジルベルトの両親だ。彼らに嫌われないようにしなければ、と思い、選んだのがこの姿。
 さすがに眼鏡はやり過ぎかなと思って、それは外した。大人っぽい落ち着いた雰囲気の紺のドレスに髪の毛はアップにして知的な雰囲気を全面に醸し出す。年が離れているため、あまりにも子供っぽいのは考え物だし、だからと言ってけばけばしいのもどうかと思い、知的美人で攻めることにしてみた。そして、できあがったのがこれ。

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