堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「本当にジルベルトでいいのかしら、って思っていたけれど。エレンがこんなにもジルのことを慕ってくれていた、だなんて、本当に嬉しいわ。念のために確認するけれど、本当に一度しか会ったことがないの?」

「きっかけは、先日の任務ですが。短い時間でありながらも、ジル様の良さというものを感じることができました」

「本当に、こんなおじさんでいいの?」

「おじさんだなんて。ジル様には私にはもったいないお方です。むしろ、私で本当によろしいのでしょうか」
 笑んでから、ジルベルトにじっと視線を向けた。ジルベルトはコクコクと機械的に顔を縦に振ることしかできない。

「エレオノーラ嬢は、第零騎士団所属と聞いているし。そのあなたの特殊な事情も聞いている」
 そこでリガウン侯爵が口を挟んだ。
「その、ジルベルトとの結婚後は、騎士団のほうはどうするつもりだい?」

「はい。できれば、続けさせていただければと思います。第零騎士団の任務は特殊ですので、誰でも務まるというわけではありません。私の後任が見つかるまでは、その責務を全うしたいと思っております」

「そうか」
 リガウン侯爵は腕を組んだ。

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