堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「父上。エレンのほうの仕事については、私の方からもお願いしたいと思っていたところです。我々第一騎士団にとっても、第零騎士団は無くてはならない存在ですし、彼女の働きぶりは第零騎士団の中でも群を抜いておりますので」

「ジルベルトがそこまで言うなら、この件に関しては私の出る幕ではないな。その辺は二人で相談しながら決めるがいい」

「ありがとうございます、リガウン侯爵」
 エレオノーラが上品に笑むと、こらえきれなかった父親がとうとう口にした。
「エレオノーラ嬢、できれば私のことをお義父(とう)さんと呼んでくれないか」

「父上」

「あなただけずるいですよ。でしたら私のことはお義母(かあ)さんと呼んでちょうだい」

「母上まで」
 ジルベルトは額に右手を当てた。この両親は何を言い出すのか。

「だって、私だって娘も欲しかったのよ。あなたは結婚するそぶりも見せないし。孫の顔はもう見ることもできないと思っていたし。だから、義理でも娘ができたことに嬉しくて嬉しくて」
 母親は今にも泣きだしそうだ。

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