堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「不束者ですが、よろしくお願いします。お義父様、お義母様」
 エレオノーラは頭を下げたが、ジルベルトは孫という単語で唇の端をひくりと動かしていたことに、彼女は気付いていない。

 とにかく、ジルベルトの両親が息子とエレオノーラの出会いを心から喜んでくれた、ということだけは伝わった。さらにエレオノーラの特殊な任務についても理解を示してくれた、ということ。さらに彼女が社交界を絶っていたことはその第零騎士団という特殊任務のためであり、それを絶つ理由として病弱設定だった、ということについては特に安心したようだ。何のための安心かは、この母親に聞かないとわからないのだが。
 さて、その両親の目の前で婚約申請書に二人は名前を書き、その後二人で教会にこれを提出した。
 つまり、この二人は正式に婚約者同士となったのである。ただし、エレオノーラにとってはジルベルトの婚約者を演じる必要になった、その瞬間でもある。
< 65 / 528 >

この作品をシェア

pagetop