堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「まあ、そうだな。婚約者になるような人物の調査は必要だな。だが、そういうのは家の者に頼むのが通例だと思っていたが」
 ジルベルトがジロリとショーンを睨んだ。知ってるくせにこういうことを平然と口にする。

「家に帰れない理由があったんだ」

 ぷっと吹き出したのは、広報部長。第一の団長が、侯爵とその夫人が怖くて邸宅に帰ることができない、というのは、情報部や広報部にとっては暗黙の了解。暗黙の了解であるなら、わざわざ言わせるようなことをするな、とジルベルトは思っている。

「まあ、ともかく。婚約、おめでとう」
 ショーンが改めて言う。

「ありがとう」
 ジルベルトも少し照れたように返事をした。

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