堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「部下のレオンです」
 ダニエルが紹介し、エレオノーラも頭を下げる。
「レオンです」
 再び発したその声は、女性のものとは思えないものだった。個室でよかったかもしれない。
 気づかれないように彼女に会えた嬉しさを、心の中に押し込めた。どのような恰好でも彼女に会えたことが嬉しいらしい。

 エレオノーラは常にレオンとして振舞っていた。食事の所作も、話し方も、女性には見えない。これが変装だとしたら、よくできているし、見破ることはできないだろう。

「それで、どのようなご用件でしたか」
 食事がある程度すすんだところで、ダニエルが口を開いた。ダニエルが切り出してくれなければ、ジルベルトは目の前のエレオノーラに見惚れて本題を忘れるところだった。

「ああ、陛下から呼び出し状が届いて。エレオノーラ嬢も一緒にという内容だったため、貴殿に相談をと思ったのだ」

「そうでしたか。では、妹には伝えておきます。日時は」
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