堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 エレオノーラ本人がすぐそこにいるにも関わらず、淡々と答え、確認をするダニエルはやはり諜報部の部長であると思った。

「明日の夕刻。そちらの屋敷まで迎えに行こう、と思う」
 ジルベルトはちらっとエレオノーラに視線を向けたが、彼女、いや彼は表情を崩すようなことはしない。こちらも、さすがとしか言いようがなかった。

「承知いたしました。妹にはそのように」

 先程から見ているが、ここにいるダニエルの部下はレオンという男性騎士であって、エレオノーラという妹ではない、ということなのだろう。諜報部の徹底ぶりには頭が下がる思いだが、それでもレオンをここに連れてきてくれたのは、恐らくダニエルなりの心遣い。ジルベルトとしてはちょっと心が晴れた気分なのだが、彼女はどう思っているのか。そのレオンの仮面をつけているエレオノーラからは、表情を読み取ることができない。

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