堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「ダニエル殿」
 ジルベルトはダニエルの名を呼んだ。

「はい」
 低い声で名を呼ばれ、ついダニエルは身を構えてしまった。本題は終わったと思ったからつい気を緩めていたのだ。

「その。エレオノーラ嬢に会いたいときは、貴殿に連絡をすればよろしいか」
 ダニエルの隣に座っているエレオノーラの眉がピクリと動いた。レオンを演じているにも関わらず。ダニエルはもちろんそれに気付いていないし、エレオノーラ自身も無意識だろう。じっと彼女の顔を観察していたジルベルトだから気付いたのかもしれない。

「ええ。私に言っていただければ、妹には伝えます。もしくは、屋敷に使いを出していただければ」
 わかった、とジルベルトは頷いた。

「そう、リガウン団長。一つ、相談事がありまして」
 とダニエルが切り出したため、そこからは仕事の話になった。
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