堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
「正確には、フランシア家のエレオノーラではなく、リガウン卿の婚約者のエレオノーラへの呼び出しだな」
 ダニエルは別なシャツに袖を通した。

「やはり。ということは、リガウン団長の婚約者になればいい、ということですね」

「いや、そもそもお前はもう立派なリガウン卿の婚約者だから」
 きちっとボタンをしめ終えたダニエルは妹の顔を見るが、どうやら兄である自分の言葉は、エレオノーラの耳には届いていないようだ。
 ここはやはり、知的美人かしらと、呟いている。

「おい、エレン。明日、オレは仕事で付き添えないから、くれぐれもリガウン団長に粗相が無いようにな」

「わかってます」
 本当に大丈夫か? とダニエルの不安はつきない。しかも人が着替える前から部屋についてきて、着替えているときも顔色一つ変えずにここにいて、本当に年頃の娘か、と不安はつきない。いくら兄妹でもどうなのだ、とダニエルは思わずにはいられない。


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